札幌高等裁判所 昭和27年(う)645号 判決
職権により調査するに刑事訴訟法第三八二条にいわゆる「事実の誤認」の事実とは同法第三三五条第一項の罪となるべき事実ばかりでなく、判決の基礎となるべきすべての事実と解すべきである。従つて判決の基礎となるべき累犯加重の原因たる前科事実につき判断を誤つたときは刑事訴訴法第三八二条の事実誤認に該当するものといわなくてはならない。ところで原裁判所で取調べた証拠たる被告人の検察事務官に対する第一回供述調書中「私は昨年九月頃窃盗罪で稚内の裁判所において懲役三月の言渡を受け服役致した外前科はありませんが」との記載及び同被告人の検察事務官に対する第二回供述調書中「其の後稚内で窃盗罪により裁判を受けたのでありますが、これは昭和二十六年三月頃で稚内簡易裁判所で懲役十月執行猶予三年の判決でした。次は同年九月頃稚内簡易裁判所において窃盗罪で懲役三月の判決を受け服役して本年三月出所致しました」との記載があり、本件犯行当時その執行を受け終つていたものであることが明らかである。然るに原審は敍上の前科の事実を認定しなかつたのは明らかに事実を誤認したものであつて、原判決は破棄を免れない。